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九州の溯渓

主に九州の溯渓記録を集めたものです。 良かったら覗いていって下さい。

野地谷 in 宮崎県西米良村

さて今回は 『 野地(のじ)谷 』 をお送りします。

野地と書いて「やち」とか読んだりもしますが(谷地もあり),意味は「湿地」,「荒地」などです。今回の谷は,近くの荒地を開拓しつくった野地集落からの由来です。

久々の沢に気持ちもはやります。

ではどうぞ。

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左:今日は晴れ。色とりどりの紅葉が青空によく映えます。
右:まずは走って入渓地へ向かいます。

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左:7kmほどで野地橋へ。ここから入渓。今日もよろしくお願いします。

右:出だしのゴーロを過ぎると左岸が立ってきて,正面に滝が現れる。17mの直滝。水が少ないですが,造りは迫力あり。

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左:岩盤が露出した場所ではこのような逆層の岩棚を探し伝って越えていきます。右下の岩壁は10mほど切れているので落ちたらアウト。これが地上1mの所にあれば怖さはないはずなので,何より平常心が大切です。

右:17m滝の滝頭。

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左:滝上の廊下帯を進むと4m滝。

右:その上はゴーロ帯。ここで岩を乗っ越すと目の前,2mの距離にイノシシが。お互いビックリ。イノシシは慌てて逃げていきました。ごめんごめん脅かして。

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左:ミニゴルジュ。

右:二俣。晩秋の沢に漂うのは静寂と静謐。水音以外,ほぼ無音の中を遡行していく感じです。でもこの静けさが,春の浮き立つような陽気,夏の湧き上がる躍動感,そして秋の,それまでの「下から上」の動きが,「上から下」の動きに転換し落ち着いていく様,などこれまでここに存在してきたであろう様々なものを孕んでいているように感じられ,味わい深いんです。

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左:正面に岩壁が立ってくると井戸底地形に。
右:左を見上げると21m滝。

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左:この辺りは鋭く切れ込んだ地形で印象的でした。

右:岩壁交じりの斜面を岩棚を右に左に拾って登ると,上流は穏やかな渓相になります。

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左:この付近の砂岩泥岩互層では石英の脈が入っているので運が良いとこんな感じのクラスターが見つかります。

右:水平層理が美しかった10m涸滝。

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左:紅葉も終盤を迎えました。
右:ひと登りで尾根へ。すぐに向かいに下ります。

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左:作業道を下り,
右:車道へ。中央奥の鈍頂は天包山です。

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左:今日の目的の一つがこれ。桃源郷トンネルの調査。10年前に貫通したのですが,未だに路線が開通していないので,確かめるために抜けてきました。

右:トンネルを抜けると砂利道で,途中から舗装道に。関係者に確認すると,残りの工事区間は県が担当しているようですが,毎年災害が起きその復旧をしながらの工事のようで公表できる見通しはまだたっていないようです。

このような想定以上の長期間に及ぶ工事は,いざ完成してみると完成した時の社会情勢とそぐわないこともあります。「できたのはいいけど,一体どれだけの人が恩恵に預かれるのか」,「それだけの時間と費用をかけた価値はあるのか」など。

ちなみにトンネルの両端に最も近い小川と横野の両集落の人口は,ここ10年で171人から142人と83%に落ち込んでいます。小川には作小屋という宿泊施設があり,ここは年間約13,000人ほどに利用されています。トンネルが開通すると作小屋までのアクセスが格段に向上するので村でも期待が高まるところではありますが,「それでも一体何人の人が恩恵を・・・」という思いは拭えないところではあります。

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左:今宵は良い月が出てきました。
右:締めはゆた~とで秋の夜長を楽しみます。

という感じでした。

遡行候補だった野地谷をようやく遡行できました。ここは遡行後の下山がネックでしたが,桃源郷トンネルが開通しているので,山越えをせずに戻ってこれました。それでもアプローチと下山で15kmほど走りましたが。

今期の沢はこれで納めようと思います。今年もあちこちケガなく遡行でき,まずはそのことに感謝です。今後は長距離ランに備えた活動が主体になってきます。

★次はランをお送りします。

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沢(市房山周辺) | コメント:0 | トラックバック:0 |

鉱物採集 in 宮崎県鹿川

さて今回も 『 鉱物採集 』 をお送りします。

場所は,宮崎県の鹿川(ししがわ)。天上の楽園とも呼べる桃源郷です。

ではどうぞ。

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左:今日はいい天気。
右:紅葉もまだ残っています。

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左:この時期は落葉した森を歩くのにはもってこい。
右:実際は速いですが,ゆったりと感じる時間が流れていきます。

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左:川の上流部に広がる天上の楽園。鹿川には桃源郷と呼ぶにふさわしい雰囲気があります。これに温泉があれば言うことなしですが。

右:さて巨大な晶洞に入り探索。壁面には平板水晶がびっしり。

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左:足元をホジホジすると石英の半自形(やや明瞭な結晶面あり)や他形(結晶面なし)のものがわんさか出てきます。ちなみに明瞭な結晶面をもつものは自形と呼ばれ,水晶と呼ぶことがあります。ここのポテンシャルは計り知れない。

右:適当に森をさまよいます。

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左:本日の収穫。長石の半自形(左)と水晶の平板結晶。
右:イチョウの黄葉が見られるようになると,秋の終わりと冬の始まりです。

という感じで今日も自然の中に浸かることができ満足しました。晩秋にさしかかった山は,あたたかな日差しを浴びつつも,どこか静謐感に包まれており,この時期ならではの雰囲気を堪能することができます。

★次は西米良の野地谷をお送りします。今季もそろそろ沢納の時期が近づいています。

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鉱物採集 in 宮崎県鹿川

さて今回は 『 鉱物採集 』 をお送りします。

先日痛めた腰がまだ完治していないので,沢から鉱物採集への転進です。すっかり冬の空になっているのを感じつつ,今回も山に入ってきました。

ではどうぞ。

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左:久々の竹の倉山。肩が張った堂々とした山容です。
右:ここにきて一気に冬の空と空気感になってきました。

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左:早速開始。するとこれが出てきました。水晶の平板結晶(タービュラークオーツ / Tabular Quartz )。

右:軽く泥を落とすとこんな感じに。平板結晶でこれだけ大きいのは珍しいのでお持ち帰り。家で計ると9.8kgありました。

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左:短時間でも自然の中に身を置くと英気を養うことができます。
右:南阿蘇の夜景。この時期はつるべ落としです。

という感じでした。午後からでしたがそれなりに収穫があり楽しむことができました。

帰途,溝にはまっている車に遭遇。まさかここで人に会おうとは思ってもみなかったので少し驚き。こういう時のためにロープやカラビナ等を常備しているので,牽引して無事に抜け出すお手伝いができました。日暮れ前に脱出できてよかったと思います。

最後に,最近の山関係の出来事で目を見張ったことを一つ。それは,あのジャヌー北壁がアメリカ人パーティーにより,アルパインスタイルで登攀されたことです。ここはかつて,スロベニアのクライマーのトモ・チェセンがダイレクトなラインを単独登攀したと発表したことで物議を醸したところでした。

当時は各界から驚喜の声が上がったのをよく覚えています。誰もが不可能だと考えていたことをあっさりと成し遂げた訳ですから・・・しかし,その後,彼のローツェ南壁登攀(これはジャヌー北壁登攀の更に上を行く衝撃を与えた)の疑義を皮切りに,一連の登攀に疑いの目が向けられ,現在では彼のジャヌー北壁登攀は認められていません。

周囲が納得する動かぬ証拠を出せればいいのですが,残念ながらそれらは一つも提出されていないのでは仕方がないことです。

そんな話題性のあるジャヌー北壁がとうとうアルパインスタイルで登攀されたのです。個人的にはこれまで行われたヒマラヤ登山の中で三指に入る偉業だと感じています。

ちなみにジャヌーの別名はクンバカルナ。インド神話におけるラークシャサに相当します。これが仏教に取り入れられると羅刹(鬼神の総称)となります。現地の人のこの山への思いがよく伝わってくると思います。

★腰の状態次第ですが,次は沢をお送りしたいところです。

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尾根筋踏査 in 西米良村

さて今回は 『 尾根筋踏査 』 をお送りします。

今日は午後から荒れるようなので,沢は控えて代わりに気になる尾根筋の踏査をしてきました。

ではどうぞ。

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左:行きしなに目を引かれたイチョウの黄葉。斜面の伐採跡にイチョウだけが植栽されており,そこだけ黄色という違和感のある景色になっていました。

右:少し走って尾根筋へ。下谷を見下ろします。

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左:尾根筋の伐採地にある作業道は天上のトレイル。眺めは素晴らしいものがあります。

右:意味があるのか疑問の鹿よけネット。倒木などであちこち倒れていました。

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左:尾根筋にあったシロモジの黄葉。和菓子の爪楊枝などに利用されるクロモジと同類です。7m程の低木ですので被写体としてはいい距離感で捉えることができます。

右:3年前に下谷左俣を遡行した時の終了点。やはり尾根筋は繋がっていましたね。

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左:米良の名峰たちは雲中です。今日は午後から荒れる予報です。
右:皮肉なことに,伐採されているがゆえに快走できる場所でした。

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左:人里の紅葉。

右:いい感じで色づいています。見た目は艶やかですが,これは死に際に出る最期の色。人で言うところの死色。自分たちに都合の良い,「法」というルールの下で安穏と暮らす人間には決して出せない色です。

紅(黄)葉というのは,「循環」というルールの元で過酷な生存競争に晒され,生死が繰り返される自然界だからこその現象。高度そうな文明を築きながら,未だにゴミ問題すらも解決できない人間社会を思うとき,自然界のメカニズムの完成度の高さには驚嘆するしかありません。バイオミメティックスを始め,人間が学ぶべきものは太古の昔からずっと,自然界に存在しています。

という感じでサクッと終わりました。まあ,たまにはこういう日もあっていいでしょう。

今日もまた新たな発見があり,自分なりに良い時間の使い方ができて満足です。今季は予定していたロードレースが不開催続きですのでレースには出ずに,桜島を含めた錦江湾1周245km(キンイチ)に焦点を絞ってトレーニングしていく予定です。

未知の探求と挑戦,沢登りに限らずランニングでも私を突き動かす原動力です。

★次は沢をお送りします。

トレイルラン | コメント:0 | トラックバック:0 |

蛇籠川支流・シリナシ谷 in 宮崎県西米良村

さて今回は 『 蛇籠(じゃろう)川支流・シリナシ谷 』 をお送りします。

ここは九州で最も秘境の地である蛇籠川。掃部岳の北側を緩く蛇行する川で,その右岸支流であるシリナシ谷を遡行してきました。秘境というだけあって,入渓地に達するのに山一つ越えて行くことになり,現代でもめったに人が入らない,貴重な場所となっています。

秋晴れのもとでの遡行となりました。

ではどうぞ。

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左:今宵はいい月が出ている。

右:村所の夜景。この地との関りはもう四半世紀にもなります。

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左:さて翌日,尾根のここから蛇籠川に向けて下って行きます。
右:小沢を下って行きます。

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左:途中で杣道を見つけそれを辿ることにします。予想以上に立派な道で快適です。

右:やがて蛇籠川との合流地点に。

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左:約1年ぶりの蛇籠川です。相変わらずのたおやかさで迎えてくれました。

右:少し上流へ行くと,シカの親子発見。小鹿の方がいち早く私に気づき観察しています。シカは視力はよくないのでじっとしていれば写真を撮ることは十分可能です。

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左:さてシリナシ谷の遡行の開始。今日もよろしくお願いします。
右:2m程の滝ですが巻くしかありません。

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左:開けたところから上流を望みます。
右:8mトユ滝。

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左:水中はきれいです。

右:今年入ったと思われる地籍調査痕以外は,人荒れしていないので気分が良くなってきます。

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左:ちょっとしたゴルジュ状地形も出てきます。
右:8m滝。見栄えの良い滝でした。

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左:7m斜滝。

右:砂岩泥岩互層の層理に沿って流れるので,見た目に惹かれるものがあります。普通は層理を割って流れる水流が多いものです。これはシリナシ谷の特徴の一つだと思います。

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左:最後の2m滝。
右:そして水涸れ。

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左:周囲にはとても感じの良い森が広がっています。
右:詰めも快適です。

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左:尾根に出て少し左に歩くと三角点です。地元で浅藪と呼ばれている場所になります。ここは西米良村と西都市の境界でもあります。

右:浅藪からは尾根筋についている地籍調査の跡を辿り蛇籠川へ下って行きます。

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左:途中,開けた所から,蛇籠川の源頭である村所山を眺めます。

右:右に目を転じると,今朝方,出発した尾根上のコルが見えました。蛇籠川まで下った後は,あそこまでの登り返しになります。この辺りはたっぷりと深山幽谷の雰囲気に浸れるので,疲れるどころか逆に英気をたっぷりと養うことができます。自分にとってこれ以上の愉悦はないと思います。

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左:そして蛇籠川との合流点まで下り,
右:斜面を適当に登り返します。

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左:途中で,旧河口(こうのくち)集落から延びる尾根越えの道に乗り,先ほどのコルまで辿ります。この辺りには山腹に走る道が何本も並行しています。

右:やんちゃ盛りのハナちゃん。今日は丸まってスヤスヤと眠っていたようです。やることなすこと,亡き愛猫のメイちゃんそっくりです。

という感じでした。

蛇籠川の右岸支流の遡行は,一山越えて遡行。その後は,いったん下って,そこから一山越えて帰るという,滅多にできない形態の沢登りを味わうことができ,満足でした。地籍調査の新しい痕跡以外は人工物がほとんどないことは,現代において貴重だと思います。

あと数本,遡行対象を残してますので,それらも一つずつ楽しみながら遡行していきたいと考えています。

★次も沢をお送りします。

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