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九州の溯渓

主に九州の溯渓記録を集めたものです。 良かったら覗いていって下さい。

豊後街道 第九回 滝室坂

今回は,豊後街道で,最大の難所と言われた滝室坂の下部調査です。
国道から上部は先日の調査で旧道や石畳跡を確認できました。

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左:坂梨からいったん57号に合流。すぐに右折していく。
右:護法社までの整備された石畳。街道は社下で左折して沢の二俣に下りていく。

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左:二俣を左に取る。沢伝いにいくと4m滝が出現。昔もここを越えていたのだろうか?だとすれば,結構な難所だったと思われる。

右:沢の渓相はこんな感じ。沢というより少し荒れた山道という感じ。

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左:沢沿いには,部分的に石畳が残る。かつては坂梨から坂ノ上までの約3km全てが石畳であったという。見てみたかったな~。

右:最後は左の右岸を上り詰めると見覚えのある場所へ抜け出す。国道57号との合流点。街道は57号を突っ切って,さらに沢沿いに進んでいく。

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左:古い資料から。整備前後の街道の様子がわかる。

右:滝室坂上部のコース。街道は傾斜を上手に殺しながらジグ(屈曲)を繰り返し,現在「カヲの墓」の道標がある場所で57号と合流している。ここも上手なコース取りだと言える。
 この辺りの山道のつけ方は,昔も今も同じ手法なので見つけやすかった。ただ下部の最初にジグを切る場所は密集竹やぶや斜面崩壊等で非常にわかりづらい。しかし,唯一その場所で,土砂流出により周囲より高くなった石畳を見つけることができた。これで57号を走らなくて済む。
 
 ここからちょっとマニアックになります。興味のない方は飛ばしてください。

 線構図的に捉えると自然の森は基本的に垂直線で構成されているので,その中で平行線となるものが確認できる時は,地層の平行層理を除けば,人工物との判断が下せる。電線,高架,林業用ワイヤーなど,人が活用するのは主に平行線物。この視座に立ち,下から山の斜面を見上げると,人工的に作られた山道(街道跡も)もはっきりと見えてきます。まあ,参勤道は傾斜を上げる必要があるので,緩傾斜の斜線ではありますが。
 
 しかし,地質や植生によっては必ずしもこの限りではありません。街道のようなある程度幅がある道は残存しやすいですが,幅が1mにも満たないような山道では数十年すれば斜面崩壊によって,土砂に埋もれやすい。特に阿蘇周辺は火山灰土なので,微細粒子であることと,粒子間の結合力が弱いことで,降水による土壌流出が顕著。
 
 一方,滝室坂の街道斜面は西南西を向いており夏期(南東)や冬期(北西)の降水の影響を受けにくい点と,杉の大量,不規則な植林により,ある程度土砂の流出が抑えられている点が挙げられます。杉自体は浅根性(せんこんせい)といって元々根張りが浅く,~街道沿いの里塚に用いられた榎は深根性で土壌保持には有効。先人の知恵に感心~,地杉ではなく植林杉は特にそれが顕著なので,土壌保持には極めて不向きなのですが,それが不規則に(いい加減に?)植林されているせいで,逆効果となって現れている。
 
 以上の視点から見て,同じ街道でも,夏期の降水の影響を受けやすい東面を向いている,二重ノ峠からの下り道では,頻繁で徹底した街道整備が必要であり,それであのような,排水機構を備えた,堅牢な石畳が残されていることが推測できます(もちろん地元の方々の熱意いよるところ大です)。
 また,大分の今市(いまいち)にも有名な石畳が残っていますが,あそこは街道中唯一,平坦路に作られたものと考えられています(基本的に石畳の目的は急坂の街道保持)。なぜ今市なのか?その理由は今市の地理的位置にあります。尾根端の緩斜面に位置するため,風雨の影響を受けて街道がグチャグチャになりやすかったためだと考えられています。

長々とマニアックになってしまいました。

今回で九回目ですが,調査を重ねる内に,豊後街道31里(124km)を走るのは,単に体力・脚力だけの問題ではなく,この距離の中に受け継がれている歴史をも走ることだとも思えるようになってきました。そのためにはまず,自然に学び,先人に学び,そして地域住民に学ぶ。そうして自分の知識や知恵を,その距離の中にある歴史に見合うものにしなければ,と痛感しています。


★次回は,峠集落跡~二重ノ峠までの尾根沿い旧道調査です。
果たして道は残っているのか?
 
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